大倉忠義×成田凌の切ないラブストーリー
ジャニーズの大倉忠義と若手イケメン俳優・成田凌が共演した話題作『窮鼠はチーズの夢を見る』。原作は、水城せとなによる同名の女性向けコミックとその続編となる『俎上の鯉は二度跳ねる』だ。
映画『窮鼠はチーズの夢を見る』はサラリーマンの恭一と大学時代の後輩・今ヶ瀬の再会を描いたラブストーリー。恭一は優しくて優柔不断で、かわいい妻もいるけれど不倫もしているヘテロの男性。そんな彼のもとに妻に依頼された探偵として今ヶ瀬が現れる。実は大学時代から好きだったという今ヶ瀬は恭一に関係を迫ってきて…!
“BLを描いたつもりはない”のにBLファンのバイブルに!
こう書くとドロドロの昼メロのようで実際にそのままのストーリーなのだが、恋愛の本質を深く描いていて心を鷲掴みにされる名作だ。第1話目が掲載された2004年から数えると16年も経つが、今なおBLファンにはバイブルのように読み継がれて、BLランキングの上位にも入ることもあるほど人気が高い。
しかし、本作は実はBL誌に連載された純粋なBLではなく、作者自身もBLを描いたつもりはないと断言している。水城は女性向けの一般コミック誌でデビューを果たし、一般漫画のヒット作を多く手がけている。「放課後保健室」や「黒薔薇アリス」、「脳内ポイズンベリー」などがあり、なかでも松本潤主演でドラマシリーズ化された「失恋ショコラティエ」でその名を知る人も多いだろう。
力のある作家・水城せとなに再びBLものを描いてほしい!
では、水城はBLを描いていないのかというと、そんなことはない。れっきとしたBLレーベル「ビーボーイコミックス」から発行されている「スリィピングビューティ」や「同棲愛」などを手がけている。
「同棲愛」は95年にBL誌「月刊マガジンビーボーイ」で連載開始し、新装版では全8巻だが当初は単行本全11巻からなる読み応えがある作品だ。思春期の男の子たちが葛藤しながら成長してゆく姿が描かれていて、シリアスでヒリヒリとした痛みを伴うが、丁寧に描かれたそれぞれの心情に気持ちをのせて読むことができる群像劇になっている。
ただ、その後に描かれた『窮鼠』シリーズは前述したように“BL”ではないわけであるし、BL作品を執筆していたときに水城はなんらかの葛藤を抱いたために“BL”は手掛けなくなったのかもしれない。今はひとくちに“BL”と言っても、さまざまなジャンルやテイストがあって間口が広くなった。力量ある作家である水城に再び戻ってきてBLを描いてほしいと思っているBLファンも少なからずいるはずだ。(文:矢野絢子/ライター)
『窮鼠はチーズの夢を見る』は9月11日より公開中
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