北イタリアのインテリアと映画/ファサードからの田園が描く心の情景『君の名前で僕を呼んで』
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映画の中のインテリアを取り上げる本稿の題材は、『君の名前で僕を呼んで』(2017年公開)。監督はルカ・グァダニーノ。アンドレ・アシマンの同名小説が原作で、その続編「ファインド・ミー」も出版され、同様のキャストでの映画化が既に決定している。
・どこを切り取っても目を奪われる美しさ! 心に刻まれるラスト数分はまさに奇跡
本作は、北イタリアの17歳のエリオ(ティモシー・シャラメ)と、アメリカから来た24歳のオリヴァー(アーミー・ハマー)の一夏の物語。当初は反発していたエリオだったが、6週間後にオリヴァーが帰る頃にはすっかり好意を抱いていた。秋が過ぎ雪が降る頃、オリヴァーから来た電話で、彼が婚約したと知らされる。
この時代・この地に住む、どことなく物憂げで中性的なエリオと、ギリシャ彫刻のような容姿に青い目の青年オリヴァー。兄弟とも、友達とも違う、互いを尊重し合う特別な関係が描かれる。
ファサードから眺めるオリーブ色の景色
本作の設定は、1983年の北イタリアのリゾート地。したがって、インテリアに焦点をあてると、テーマは「北イタリアの別荘のインテリア」になる。
高い天井に広いエントランス、白い塗り壁、黒檀調の扉や手すり、家具などは、まるで教会のように大切に世代を超えて受け継がれていくべきものを思わせる。大学教授であるエリオの父・パールマン(マイケル・スタールバーグ)の図書館のような書斎も同様の設えだ。
何よりも、ファサードからインテリア越しに眺める田園風景に心奪われる。数々の自然描写が、上質な額縁に納められた絵画にも見え、場面場面のエリオの純粋でひたむきな心情を映す作品のよう。
エリオの部屋は、ドアもベッドもオリーブ色。このインテリアは、エリオの繊細で美しいナチュラルな心を映す鏡のように思える。
キッチンはどこまでも白
次いで印象的なのは、食事のシーン。
フレッシュな日差しの下いただく最初の朝食、キャンドルライトの下でいただくワインなど、作中多く登場するアウトドアのシーンでは、ペンキがはげたスチールの白い椅子がダイニングセットとして使われている。こうしたシャビー(朽ちた)インテリアは、ベッドヘッドにも見られる。インテリアショーやミュージックビデオなどで印象的に使われる類いのインテリアアイテムだ。
おばちゃん達が集まるキッチンもいい。壁だけでなく換気扇のフードまで真っ白で、銅の鍋がキッチンのチークと呼応して差し色になっている。
インテリアの素材感を伝える効果音
本作は、こうした映像表現のみならずサウンドにも気配りが効いている。ふたりの心を映すように繊細だが心地よいのでずっと聞いていられる。
鳥の鳴き声や教会の鐘の音が遠くから響き、カットはそのままピアノの旋律とともにピアノを弾くエリオの姿に。まだまだ少年だと思っていた彼がすこぶる官能的に演奏するシーンには、ぐいぐい引き込まれる。
80年代のファッションも、スモーキーな町並みも、ふたりだけの純粋な世界と世の中とのコントラスト感を高めている。「心も体も、一度しか手にできない」という父の教えを胸に、エリオは続編でどんな大人として帰ってくるのだろうか。(文:fy7d)
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