いつ書いているの? 多作な作家、一穂ミチ
2020年12月11日に公開される劇場版BLアニメ『イエスノー』こと『イエスかノーか半分か』。原作は一穂ミチによる同名小説(イラスト:竹美家らら)で、人気者の王子様キャラだが実は腹黒のアナウンサーと映像クリエイターとの出会いと恋を描いたラブストーリーだ。
・キュンキュンする大人気BLの劇場アニメ化『イエスかノーか半分か』12月11日に公開決定!
一穂ミチといえば、まず驚かされるのはその作品数の多さ! 書籍だけで50冊近く発表しており、これで会社勤めもしているらしい兼業作家だというから、「1日24時間の同じ時間が流れているんだろうか?」と感服する。筆者は何度かイベントで個人的に一穂先生にお会いしたが、そのことを伝えると、「とんでもないですよ~」と快活に笑っていたのが印象に残っている。同人誌も多く執筆しているし、ちょっとしたショートストーリーなどもちょくちょく発表していて、とにかく多作で供給多く、ファンには嬉しい作家といえる。
心情をこまやかに描いた作品に感涙
デビュー作は2008年の「雪よ林檎の香のごとく」で、高校教師と男子生徒の密やかでいて情熱的な恋を描いたラブストーリーだ。そこからわずか10数年の間に約50冊を発表しているのだから、とてもハイペースな作家ということがわかってもらえるだろう。しかも、これだけ作品数が多くても、既視感を覚えることはなく、どの作品もキャラクターがしっかり確立されていて背景も奥深い。
登場人物が特殊な職業に就いていることもよくあり、リサーチもしっかり行われたのであろうと推測されるほど書き込みが細かくわかりやすい。こちらの知的好奇心を満たしてくれて、お仕事ドラマとしても面白く読める。
そして、もちろん仕事の描写だけでなく心情表現もこまやか。自分の心の中でのせめぎ合いやちょっとした引っかかりなどを上手く掬い取って、読者の共感を導く。筆者は一穂の作品で何度泣かされたかわからないほどだ。
BLを読んだことのない人にもおすすめしたい美しい文章も魅力!
既視感を覚えることはないものの、作品には共通点もある。例えば、家族と死別しているなど、登場人物が何らかの家族問題を抱えていることが多い。それが物語のなかに浮かずに組み込まれていてドラマチックな展開を見せてくれる。
さらに、文章そのものが美しい。難しい言い回しや漢字を使う訳わけでなく平易な言葉で、シンプルでいて美しい文章で綴られている。もしあなたが「BLは読まない」と敬遠しているのであればもったない。ぜひ多くの人に読んでほしい作家だ。(文:牧島史佳/ライター)
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