水橋研二や瀧内公美ら演技派俳優に恵まれた今井文寛監督長編デビュー作
水橋研二主演の『カゾクデッサン』が、10月30日(金)に池袋の新文芸坐にて特別レイトショー上映、終映後にはトークショーが開催される。
『カゾクデッサン』は、照明部としてキャリアを積んだ今井文寛監督の長編デビュー作で、脚本も自身が書いている。「製作資金は私の貯えから捻出しました。しかし、それだけで一本の映画を作り上げることはできず、足りない分は仲間がいろいろな形で補ってくれました」と今井監督が語るように、完全なインディペンデント映画だ。しかし、その熱意が伝わったのか、水橋研二、瀧内公美といった演技派から、10代の新鋭・大友一生など優れた俳優たちが出演、幸運なデビュー作となった。
一方で不運もあった。3月21日からの公開直後に新型コロナウイルス感染拡大の影響で上映館が休館となり、苦戦を強いられることになったのだ。とはいえ、鑑賞した人々からの評価は高く、特別レイトショーとして久々に都内での上映が決定した。
キャストと監督の本音トークが聞けるかも!?
物語は、元ヤクザの剛太(水橋)のもとに、元妻の息子・光貴(大友)が現れ、「母が交通事故にあって意識が戻らないから声をかけてみてほしい」と頼まれることから始まる。剛太の恋人(瀧内)や光貴の父らの想いが交差するなか、光貴は自分の出生の秘密を知ってしまう。剛太の大人になりきれていない中年男の優しさや、中学生の光貴が剛太に惹かれて暴力的に振る舞うときの心の動きなどが、光と影が印象的な詩的な映像によって綴られていく。家族の形や絆を優しい目線で問いかける作品だ。
30日の上映後のトークショーには、水橋研二、大友一生、今井文寛監督が登壇する予定。インディペンデント映画ならではの現場の苦労や映画への熱い想いなど、本音トークが聞けそうだ。
今井文寛監督から熱いメッセージ
また、特別レイトショーに向けて今井監督からメッセージをいただいたので紹介する。
「このコロナ禍、まだ先が見えませんが、それでもいずれコロナ以後の世界がやって来ます。その時、人間と人間の間の距離が離れたままの習慣が何処かに残ってしまうのではないかということを、少しばかり危惧しております。人間はやはり、身体と心を伴ったコミュニケーションを求めている生き物だと思っています。この映画で描かれるコミュニケーションはいささか古臭い、熱苦しいものだと捉える人もいるかもしれません。しかし身体と心をぶつけてこそ得られる関係、ぶつけて傷つけ傷つけられることで得られる人間のスケールというものもあると思います。そのようなものが遠い郷愁にならないようにという願いが、この映画には込められています。それはきっと、人生の先輩たちが私たちに託したものでしょう。
この映画、様々な想いが込められた作品です。何よりも、参加してくれた俳優陣、スタッフ陣の映画への純粋な情熱が、スクリーンを輝かせています。『カゾクデッサン』自信と誇りを持ってお薦めさせていただきます。監督・脚本、今井文寛」
詩情あふれる映像が秀逸な作品だけに、スクリーンで見たい。(文:中山恵子/ライター)
[イベント概要]
『カゾクデッサン』特別レイトショー&トークショー
日時:2020年10月30日(金) 開場19:20、開映19:40、映画終了21:20
場所:新文芸坐(東京都豊島区東池袋1-43-5 マルハン池袋ビル3F)
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