世界屈指の美術館、その裏側に潜入したドキュメンタリー3本
#グレート・ミュージアム ハプスブルク家からの招待状#ドキュメンタリー#ナショナル・ギャラリー 英国の至宝#フレデリック・ワイズマン#みんなのアムステルダム国立美術館へ#ロンドン・ナショナル・ギャラリー展
6月18日から10月18日にかけて国立西洋美術館で行われた「ロンドン・ナショナル・ギャラリー展」は盛況の内に幕を下ろした。同展覧会は、英国が誇る世界屈指の美の殿堂と呼ばれる美術館ナショナル・ギャラリーが、200年の歴史の中で初めて館外で行った大規模な所蔵作品展となった。11月3日からは大阪の国立国際美術館に会場を移し、2021年1月31日まで日時指定制で開催されている。
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ワイズマン監督が撮影を熱望! 『ナショナル・ギャラリー 英国の至宝』
ヨーロッパ絵画を網羅する質の高いコレクションで知られるロンドン・ナショナル・ギャラリーだが、その裏側に潜入したのが巨匠フレデリック・ワイズマン監督によるドキュメンタリー映画『ナショナル・ギャラリー 英国の至宝』だ。ワイズマン監督が30年にわたって撮影したいと熱望し、実現したというこの作品は、ナショナル・ギャラリー全館に3ヵ月にわたって密着。経営陣が予算やPR、タイアップの是非などについて話し合う様子や、学芸員たちによるギャラリートークやワークショップ、さらには絵画の修復作業などにも密着。美術館の裏側がよく分かる内容となっている。
改修工事に密着した『グレート・ミュージアム ハプスブルク家からの招待状』
19世紀の皇帝フランツ・ヨーゼフが、オーストリア・ウィーンに建設したという、歴史ある美術館がウィーン美術史美術館だ。こちらでは、ハプスブルク家の歴代皇帝たちが蒐集した膨大な数の美術品を所蔵。クラーナハ、フェルメール、カラヴァッジオ、ベラスケスなどの名画から絢爛(けんらん)豪華な美術工芸品まで多種多彩な美術品を所蔵している。同美術館の創立120年の節目に取り掛かった大規模な改装工事に2年以上にわたって密着したドキュメンタリー映画が『グレート・ミュージアム ハプスブルク家からの招待状』だ。「伝統の継承」と「大胆な革新」という正反対の命題に悩みながらも、芸術を扱っているという誇りを失わないように日々働くスタッフたち。特に収支バランスをしっかりとしたい経営陣と、良い展示をしたいと思いながらも、予算面での現実に苦悩する美術館スタッフとの攻防は見応えがある。
再オープンまで10年の裏側を追った『みんなのアムステルダム国立美術館へ』
限られた予算の中で、いかにして自分たちのやりたいことと折り合いをつけるか、ということはどの美術館も共通の悩みとしてあるようだ。レンブラントの「夜警」やフェルメールの「牛乳を注ぐ女」など、オランダが世界に誇る至宝の数々を所蔵する、オランダ最大の美術館であるアムステルダム国立美術館も同じ悩みを抱えていた。同館は2004年から改修工事が行われたが、そこから10年たった後、2013年4月にようやく再オープンを果たす。だが、なぜ再オープンに10年もかかったのか。その裏側に密着したドキュメンタリー映画が『みんなのアムステルダム国立美術館へ』だ。その背景には、美術館を貫く公道が改修工事によって「自転車が通りにくくなる」として、自転車王国アムステルダムの市民が猛反発したことも原因のひとつとしてあった。その後もそれぞれの意見やこだわりがせめぎ合い、美術館の誰もが疲労困憊(こんぱい)となる。だが、それでもなんとかプロジェクトを完遂させようと奮闘するスタッフの方々に敬意を表したくなる1本だ。
現在、ヨーロッパでは、新型コロナウイルスの第2次感染拡大の影響により、ルーブル美術館をはじめ、多くの美術館が休館を余儀なくされている。これらのドキュメンタリー作品で美術館スタッフの奮闘を見た身としては、一刻も早い事態の収束を願わずにはいられない。(文:壬生智裕/映画ライター)
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