腹黒キャラがかわいい! BL劇場アニメ『イエスかノーか半分か』レビュー
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BLフェスにて『イエスかノーか半分か』、12月11日より公開中!
大人気BLの劇場アニメ『イエスかノーか半分か』がボーイズラブの世界を楽しめる上映イベント「BL FES!!-Boys Love Festival!!-」(通称BLフェス)で2020年12月11日から2週間限定公開中だ。
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「イエスノー」こと「イエスかノーか半分か」は原作・一穂ミチ&イラスト・竹美家ららの大人気BL小説。多作な一穂ミチの原作の中で「雪よ林檎の香のごとく」「ふったらどしゃぶり~ When it rains,it pours~」と並んで3大人気作と言わている。他の2作よりもコミカルで入りやすく、それでいて切なさやドラマとしての深さもあるキュンキュンさせられるボーイズラブストーリーだ。
表の顔は王子様、でも中身は腹黒なアナウンサーが主人公
主人公は仕事が完璧で爽やかなイメージのテレビアナウンサーの国江田計。なのだけど、この計のキャラが唯一無二と言っていいくらいユニークなキャラクターで、この作品が好きな人は計推しが非常に多い。なんといっても爽やかな王子様ポジションのアナウンサーなのに、実はものすごい腹黒。表向きの顔とは全然違うのだ。
腹黒キャラはBLで少なくないが、それでも計はちょっと特別。まず、外ヅラと内面のギャップがあり過ぎる。キラキラで優しくて奥ゆかしいのに、心の声では毒を吐きまくり。しかも、頭の回転も早くて賢いのでその毒舌が的確なのだ。捻くれ者というよりは、わかるわかるとこちらも共感できてしまう内容。
そして、他人に厳しいだけじゃない。自分にも厳しくてとてもとても頑張り屋さん。できる人間でいたいから、人にはとても真似できないことでもちゃんとやり遂げる。そのためにできない人間を見下してはいるけれど、それをしても許されるぐらいに努力の人なのだ。
さらにはそれでいてかわいい! がんばったり悔しくなったり葛藤してる姿に切なくていじらしくなってしまう。だから困りものだ。こんなキャラクター、好きにならないでいられるわけがない。
素で接することのできる相手に出会い…
それは読者だけじゃない。彼と出会った映像クリエイターの都築潮も計に惹かれてゆく。計とは、映像クリエイターとして計が潮を番組で取材したことで知り合った仲。ただ、計が夜な夜なプライベートの腹黒素顔モードで出歩いているときにも出会ってしまう。
ばったり遭遇して計に怪我を負わされてしまい、潮は計をアナウンサーの国江田計だと気づかないまま、怪我の代償として自分の映像制作を手伝わせることに。口は悪いけど一本筋は通ってて面白い計に興味を抱くようになる。計は計で、“オワリ”と偽名を名乗り、他人には見せたことがない素顔で潮に接し、それでも引かずに受け入れてくれる潮とともに過ごす時間を居心地よく感じていく。
でも、それは逆に計のアイデンディティを揺るがすことに。みんなに見せている国江田計はなんなのか? 本当の自分をさらけ出せず、このまま孤独でいるのか? そもそもこれは孤独なのか? 孤独なのはいけないことなのか? 今まで考えたこともない不安が押し寄せる。その上、仕事でも今までにない事態が起こり、計は不安に押しつぶされそうに…!
毒舌だけど、自分に正直で一生懸命な計が可愛くて切なくなる。そして、この苦しさはおそらく計が初めて本当の意味で人を好きになったからこそ。計にとっての初めての恋にキュンキュンしてしまう。
かわいい2人の映像にテンション爆上がり!
劇場アニメ化ではそんな計の姿や表情が見られて、もうニヤニヤが止まらない! キャラクターデザインは原作の竹美家ららのイラストのイメージ通り。でも、原作は小説だから当然のことながら全場面イラストがあるわけじゃない。それがアニメだといろんなシーンを見られるのだからファンは嬉しい限り。このシーンはこんなにはにかんだ顔をしてたのか! そうそう、ここの反応がかわいいんだよね! といちいち頬が緩む。
計と潮の声を担当するのはドラマCDから引き続き、計役は阿部敦で潮役は川原慶久がそれぞれ演じている。計役の阿部はアナウンサーという役柄通りの美声だし、潮役の川原はイケメンでスパダリなキャラクターに合った低音が響くイケボだ。
潮はマイペースだけど、包容力があって頼れる男であることがアニメ版でも伝わってくる。原作小説のイラストでは細かくはわからなかった、潮の工房兼住まいのガレージのある家がアニメ版ではしっかり描かれているのも嬉しい。脳内で想像していた通りのシャッターや無造作な表札もあってそれだけでテンションが上がった。
もちろん家だけじゃなく、脳内で想像していた潮と計が動いて喋るんだもの、テンション爆上がりだ。映像化は自分の中のイメージと違っていること多いから見たくないという方もいると思うが、原作が好きならなおさら一度見てみることをオススメする。
声がイメージとは違うだとか、お仕事のドラマも面白いからもっと計のお仕事シーンも描いて欲しいだとか、思うところはあるかもしれない。けれども、昨今BLコミックスが映像化されることは増えたが、BL小説が映像化されることはなかなかない。せっかくの好きな小説の映像化を見られるチャンスを逃さないで欲しい。何と言ってもお祭りなんだから乗っからなきゃソンだ!
そうそう、お仕事シーンは割愛されている部分もあるけれど、BL重視で描かれていて、えちシーンはしっかりとあるので不安だったファンはご安心を。
劇場アニメにキュンとなったら、ぜひ原作小説も読んでみて!
さらに最後まで見ると、これは続編もあるのでは? と期待が高まることに! わざわざ人気声優の江口拓也が皆川竜起の声を担当しているということは、もっと竜起が登場する続編も製作されるのでは? 「両方フォーユー」もアニメ化するんだよね、きっと! と原作ファンとしては欲が出てくる。(※「両方フォーユー」は、「イエスかノーか半分か」(ディアプラス文庫)に収録されている書き下ろし作品。計と潮のその後が描かれ、後輩アナウンサー皆川竜起が登場する。)
反対に原作は未読でも劇場アニメに興味がある方は、原作を読んでいなくてもしっかり楽しめるし、原作も読んでみたい方はぜひチャレンジして欲しい。一穂ミチは文章もうまく、スラスラと読めてしまうはず。「イエスノー」は劇場アニメ化されたのは1冊目だけだが、今のところシリーズは7冊、同人誌や特典小冊子の総集編は2冊発刊されている。1冊目も読んだらもっと潮と計の話を読みたくなった、と勢い余った方は、3冊目の「おうちのありか~イエスかノーか半分か~」を読んで欲しい。順番に読む方が時系列としてはわかりやすいが、3冊目は潮の背景が深く掘り下げられ、スパダリの潮の弱い部分が描かれてこれまた切なくてキュンとする。こちらを読めば潮を見る目が変わって、さらに劇場アニメ版の『イエスノー』もより深く楽しめるだろう。
2週間限定公開だから、大きなスクリーンで見られるせっかくのチャンスを逃さぬよう、ご注意を。来場者特典はショートストーリーと劇場アニメ設定資料が掲載された豪華な冊子なので、ぜひゲットしたいところ。数量限定なので欲しい方はお早めに! (文:牧島史佳/ライター)
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