主演のキアヌとアレックスだけでなく監督も脚本家も同じ
【週末シネマ】80年代後半から90年代初めにヒットし、キアヌ・リーヴスのブレイク作となった『ビルとテッド』シリーズが29年ぶりに第3作『ビルとテッドの時空旅行 音楽で世界を救え!』を完成させた。
・『ビルとテッドの時空旅行 音楽で世界を救え!』キアヌ・リーヴス×アレックス・ウィンター インタビュー
カリフォルニアに住む、ロックスター志望のお気楽高校生コンビ(ビルとテッド)が主人公のコメディは日本では公開当時にヒットせず、あまり浸透しなかったが、アメリカではアニメ化されたり、朝食シリアルなど関連グッズも販売された大人気作。10年以上前から続編の待望論や製作の噂が流れていた。
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第1作『ビルとテッドの大冒険』(89年)、第2作『ビルとテッドの地獄旅行』(91年)と同じ、ディーン・パリソット監督(『ギャラクシー・クエスト』)と脚本家2人(クリス・マシスン、エド・ソロモン)、主演のリーヴスとアレックス・ウィンターも揃った今回は、中年になったビルとテッドに彼らの娘2人も加わり、かつて課せられた予言「ビルとテッドの音楽が将来、世界を救う」を実現させるための時空の旅を描く。40代以上の大人にはノスタルジーを誘い、若い世代には“こういう生き方もあり?”という選択肢を提示するかもしれない。
キアヌがユルい体型で中年おやじを体現
前作『ビルとテッドの地獄旅行』から30年近く経ち、当時高校生だった2人の外見はさすがに老けたが、中身は良くも悪くも変わっていない。「少年の心を持つ」という表現は、年甲斐もない行動に自己陶酔するのを遠回しに表す場合にも使うが、言葉通りの意味で体現しているのがビルとテッドだ。
歳をとっても変わらない無邪気さで、ちょっと抜けているけれど最高に人柄が良くて、驚いた時に思わず出る「Whoa!」の声のトーンが全く変わっていないのは感動的ですらある。
普通にしていれば実年齢よりだいぶ若く見えるリーヴスも、今回は同世代の平均像に近い、ユルい中年体型で登場。ウィンターと2人で、かつての人気が嘘のように忘れ去られたロックバンド“ワイルド・スタリオンズ”を持てあます、ビルとテッドなりの“中年の危機”を演じている。
バンドは低迷、以前の時空旅行で中世から連れてきた妻たちとの関係も危うくなり、カップル・セラピーを受けることになると、2組一緒に受けようとする。セラピストの質問に答えるビルとテッドが使う一人称は「俺(I)」ではなく、常に「俺たち(We)」というのは、笑いに包みながら、さりげなく問題を示唆する役割もあって、なかなか深い。
77分で世界を救う曲は完成するのか? あのタイムトラベル装置も登場
そんな折、彼らの前に未来からの使者が現れる。「世界を救う」楽曲完成までのタイムリミットまで77分25秒しかないというのだ。彼らには、それぞれの親友にちなんだ名前を命名された娘たち(ティアとビリー)がいる。父親たちの最大の理解者である2人も加わり、4人は二手に分かれて楽曲完成のために過去や未来へと時空旅行を繰り返していく。
時間の猶予が告げられてから、上映時間と劇中の時間進行がシンクロする77分。焦って必死なのに、どこかゆるい。タイムトラベルの理屈など、わかったようなわからないような設定で飛ばしていくが、緻密さを求めるよりも、遠い昔や未来を行き来して、その時代の自分たちと対面するたびに相変わらず面食らうビルとテッドのナイーブさを愛でるべし。シリーズのお約束である、電話ボックス型のタイムトラベル装置、古き時代の偉人(本作の場合はモーツァルト、ジミ・ヘンドリックスなどの音楽家)とのコラボレーションも健在だ。
2020年は本当に、誰もが思いも寄らなかったほど重く、つらい1年になった。まだ何も解決はしていないけれど、張りつめた心と体を少し休める余裕が作れたら、楽しんでもらいたい作品だ。世界を救えるかどうかはわからない。ただ、ジタバタしながら使命を果たそうとする不器用なヒーローたちを「何やってんの」と笑いながら見ているうちに、気分が上がっていることは間違いない。(文:冨永由紀/映画ライター)
『ビルとテッドの時空旅行 音楽で世界を救え!』は、2020年12月18日より全国公開中
(C) 2020 Bill & Ted FTM, LLC. All rights reserved.
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