2020年が明けて早々、中国・武漢で新型コロナウイルス(以下、コロナ)発生が報じられると感染はあっという間に世界へ拡大していった。
折しもアメリカは2月のアカデミー賞発表を控えた賞レースの真っ只中で、連日のように授賞式や候補作の監督、俳優たちによる宣伝活動が行われていた時期。『パラサイト 半地下の家族』が非英語作品として初めてアカデミー賞作品賞に輝いた2月9日(現地時間)には、アメリカ国内ではまだ新型コロナウイルスの流行は局地的だったが、感染は徐々に広がっていった。
そして翌3月、ハリウッドの大物スターがコロナに感染したと公表した。
トム・ハンクスとリタ・ウィルソン夫妻だ。ハンクスの出演する映画の撮影でオーストラリアに滞在していた夫妻は、風邪の症状が出たために病院で検査を受けたところ、コロナの陽性反応が出た。
その後もイドリス・エルバやオルガ・キュリレンコなど検査で陽性だったと発表するセレブが続出した。彼らはSNSで自身の病状や治療について、“あくまで私の症状に効いたもの”と鵜呑みにしないよう注意を喚起しつつ報告した。
欧米では感染拡大防止を目指してロックダウンが始まり、普段は世界を飛び回って仕事をするセレブたちも自宅で自主的に隔離生活を送るようになった。彼らは慣れない事態に困惑しつつも、巣ごもりに備えて庶民と同じようにスーパーマーケットで食材や日用品を買いだめしたり、SNSを介して外出を控えるよう呼びかけていた。
家にこもりきりで孤立しがちな人々に向けて、インスタグラムやYouTubeなどでライブ配信を行ったセレブたちも大勢いる。自主隔離中の日常を伝えたジャスティン&ヘイリー・ビーバー夫妻や、友人同士をZoomなどで繋いで即席のトーク番組を頻繁に更新したマイリー・サイラスのほか、ジョシュ・ガッドはチャリティの募金活動と連動させて、『バック・トゥ・ザ・フューチャー』や『グーニーズ』など80年代の大ヒット映画のキャストやスタッフを集めた同窓会番組を企画。世界中からアクセスが殺到した。
欧米ではマスクを着ける習慣がなかったことなどから、予防対策がなかなか徹底されず、春から夏にかけても感染は拡大する一方だった。
前述のトム・ハンクスは7月に、新作のバーチャル記者会見の席で「明日を迎えるために私たちにできることは3つしかありません。マスクを着け、社会的距離を保ち、手を洗うことです」と予防策の重要さを再三訴え、「とてもシンプルで簡単な行動です。この基本的な3つのことをやらないでいる人がいたとすれば、私は『恥を知れ』と思うだけだ」と語った。
注意をしているつもりでも感染してしまう恐ろしさを語ったのはドウェイン・ジョンソン。自身のインスタグラムの動画で感染を公表し、妻と娘2人(4歳と2歳)からも陽性反応がでたことを明らかにした。外出の際にはマスクを着用し、手洗いや社会的距離の確保を徹底していたにも関わらず、検査で陽性反応が出たことにショックを受けたという。家族ぐるみの友人の一家から感染したと思われることから、親しい友人や家族との面会の際は、事前に検査を受けたり、マスク着用するなど、感染予防のために極力注意を払うよう呼びかけた。
11月になって、今年初めに感染し、闘病生活を送っていたことを明らかにしたのはヒュー・グラントだ。自分と妻が2月にコロナに感染したと確信していたが、最近受けた抗体検査が陽性だったことが確認されたという。
「とても妙な症状から始まりました。ひどく汗をかいて、まるで汗のポンチョのようで、非常に厄介でした」
「眼球が3サイズほど大きく感じられ、巨大な男が私の胸の上に座っているような感じがしました」と語ったグラントはある日、街を歩いている時に自分の嗅覚が機能していないことに気づいた。妻の香水を直接顔にスプレーしても何の匂いもしなかった。この時は正式な検査は受けなかったが、10月に抗体検査を受けたところ陽性の結果が出た。「私たちは抗体があります。ちょっと誇らしく思っていますよ」と、少し冗談めかしてグラントは語った。
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アメリカでは11月の投票日を控えた10月にドナルド・トランプ大統領が新型コロナウイルス感染を公表。反トランプ派が多いセレブたちはさまざまな反応を示し、自身も感染経験者のアリッサ・ミラノは「コロナに感染し、今も後遺症に苦しむ1人として心から言えるのは、最悪の敵(注:トランプ大統領)であってもこのウイルスに罹ってほしくないということです。どうぞマスクを着けて」とハートの絵文字を添えてツイートした。
大統領は当時開発中の未承認薬などを処方し、わずか数日で入院先からホワイトハウスに戻って「コロナを恐れるな」とツイートする大統領に、クリス・エヴァンス(『アベンジャーズ』シリーズ)反発を示すセレブは少なくなかった。大統領が退院を予告したツイートをリツイートしたハミルは「私は、自身の経験から学び、アメリカ国民に危険なアドバイスを与えない大統領たちが好きだ」と、前任者たちを引き合いに、現大統領を言外に批判した。
アメリカでは12月初旬に新たな感染者が5日間で100万人超と急増するなど、ウイルスの勢いは止まらない。ワクチンの接種も始まる一方、イギリスでは変異ウイルスが急速に広がるなど、世界はまだ安心できない状態が続いている。
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