『紅の豚』でロッソを演じた森山周一郎にジーナ役の加藤登紀子が追悼コメント

声優で俳優の森山周一郎(もりやま・しゅういちろう、本名:大塚博夫=おおつか・ひろお)が、2月8日に肺炎のため死去した。86歳だった。

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森山の公式ツイッターには、ファンからの追悼コメントが相次いでおり、代表作として宮崎駿監督の映画『紅の豚』の主人公ポルコ・ロッソの声を偲ぶ書き込みが目立つ。

その相手役・ジーナを演じた加藤登紀子は自身のブログを更新し、『紅の豚』上映(92年)の前年に、「いい奴はみな死ぬな。」というホテルアドレアーノで語り合うシーンのセリフを仮録音した時から変わらない森山の印象を記している。

「小さなデスクがあるだけのスタジオで差し向かいで、、。あの瞬間に、私はジーナになってたんですよね。森山さんのマジックにハマった感じで。本当に、それから何度も画面でお会いしてるので、もう30年近く過ぎたなんて思えません。86歳になってらしても、30年前のお姿しか思い出せないので、、」と、記した後、「作品は永遠ですけれど、生き続けていますから、森山さんが亡くなったというもう一つの物語が、今から始まるような気がするのです」と、誰もが一瞬で虜になる森山の永遠の魅力について述べた。

声帯は2枚半!? 渋い声と職人芸で印象深いセリフを人々の記憶に残す

森山は、愛知県名古屋市出身。愛知県犬山高等学校時代は野球部に所属し、日大芸術学部映画学科を中退。劇団東芸の第一期研究生となる。

舞台での経験を生かして、『shall we ダンス?』で草刈民代演じる岸川舞の父でダンススタジオを経営する岸川良を演じるなど、俳優としても活躍。直近では、昨年放送のNHK連続テレビ小説『エール』に主人公・古山裕一の祖父役で出演、遺作となった。

森山が生涯の夢と掲げた映画監督は、大川陽子主演、中尾彬、松尾嘉代共演の『幻想のパリ』で叶えている。

もっとも、特に印象深いのは、渋みのある低い声を生かした声優やナレーション。森山の声は幼いときから父親のそれに似ており、担当医は声帯が2枚半あると診断したのだとか。父親は、彼が9歳の時に亡くなっているが、この声を父からもらった遺産と答えている。

日本語吹き替えでは、20代の頃からジャン・ギャバンを担当。チャールズ・ブロンソンによるCM「う〜ん、マンダム!」は一世を風靡した。また、森山が吹き替えた『刑事コジャック』のテリー・サバラス役は、世界中に吹き替えがある中でニューズウィークUSA版で日本がNo1とたたえられたという。

ナレーションの仕事も多く、ラジオ「ジェットストリーム」や、仲間由紀恵『TRICK』 など多数。

声優としては、冒頭に掲げた『紅の豚』のほか、『リボンの騎士』のガマー、『マルコ・ポーロの冒険』のフビライ・ハーン、『リトル・マーメイド』のフロットサムとジェットサム、『キャプテン』の青葉学院の監督など枚挙に暇がない。

『さよなら銀河鉄道999 アンドロメダ終着駅』で、森山演じる老パルチザンが主人公の少年・星野鉄郎を励ます言葉「生きたかったら、命ある限り歩け」は、少年が大人になった今も心に響く。キャプテン・ハーロックを演じた井上真樹夫が2019年の11月に逝ったのに続き、偉大な声を失った。

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