100以上ものヴァージョンがあるといわれる「ルパン三世のテーマ」
【日本の映画音楽家】大野雄二
『ルパン三世』の音楽、なかでも大野雄二の作曲による「ルパン三世のテーマ」は、これまでに何度も繰り返し“再発見”されてきたが、その機運が特に高まったのは1990年代の終わりごろ。東京スカパラダイスオーケストラがライヴでカヴァーし、小西康陽らのリミックスを収録したルパン生誕30周年記念アルバム『PUNCH THE MONKEY』シリーズが好セールスを記録した時期だ。
2000年代以降も数多くのテレビスペシャルと劇場用アニメのほか、2015年のテレビ第4シリーズと2018年のテレビ第5シリーズなど、『ルパン』作品は制作され続けているが、大野雄二はそのほとんどの音楽を担当。件のテーマを様々なアレンジで再演しているほか、書き下ろし曲も都度提供している。2017年には「ルパン三世のテーマ」誕生40周年を記念したコンピレーションアルバム『LUPIN! LUPIN!! LUPINISSIMO!!!』がリリース。同じ曲のアレンジ違いばかりを20曲近く収めた、極めてユニークなアルバムとなった。いまやこの「ルパン三世のテーマ」は、大野本人がアレンジを手がけたものだけでも100以上のヴァージョンが存在すると言われている。
封印した『ルパン』絡みの演奏を再開、よりゴージャスなアレンジも
あまりにも有名な曲をレパートリーに持つ多くの作者がそうであるように、大野雄二も一時期は『ルパン』絡みの曲の演奏を封印していたという。1970年代にジャズピアニストから作曲家に転身し、しばらくステージから離れていた大野が本格的に演奏活動を再開したのは1990年代の終わりごろで、『ルパン』リバイバルの時期と重なっていたこともあり、あまりにもリクエストが多かったことから大野雄二トリオとして1999年にアルバム『LUPIN THE THIRD “JAZZ”』をリリース。その好評を受けて2006年にはYuji Ohno & Lupintic Fiveというセクステットを組み、よりゴージャスなアレンジで『ルパン』の音楽を味付けした『LUPIN THE THIRD “JAZZ” the 10th ~New Flight~』も同年にリリースしている。現在も、大野が初めて『ルパン』を手がけた際に用いたYou & Explosion Brand名義のほか、大野雄二トリオ、前述のセクステットを発展させたYuji Ohno & Lupintic Six、コーラスグループ・Fujikochansのプロデュースなど、『ルパン三世』に関わる仕事は後を絶たない。
『犬神家の一族』や『あぶない刑事リターンズ』など多彩に活躍
ジャズピアニストとして、作曲家として、数多くの作品を残してきた大野雄二だが、映画&テレビ音楽家としても膨大な量の仕事をこなしており、“大野雄二=ルパンの人”のひと言では到底片づけられない作風の幅広さには驚くしかない。よく知られている『犬神家の一族』(1976年)や『人間の証明』(1977年)、『小さな旅』(1983年)のほか、『あいつに恋して』(1987年)、『あぶない刑事リターンズ』(1996年)、『義務と演技』(1997年)、アニメ『キャプテン・フューチャー』(1978年)、『スペースコブラ』(1982年)など、手がける作品のジャンルは実に多彩だ。『犬神家の一族』で主演を務めた石坂浩二とは慶應義塾高等学校の同級生で、この『犬神家』以外にも大野の音楽に石坂が朗読を付けたアルバムなどが制作されている。
近年もスカパラはライヴのクライマックスで「ルパン三世のテーマ」をプレイして観客を沸かせているし、同曲はMONKEY MAJIKによるヴォーカル入りのカヴァーなどでも聴き継がれている。2017年のインタビューで大野雄二は「昔から日本の映画の劇伴に不満があった。音楽の印象が薄いと感じていた」と語っているが、『ルパン』の成功が日本のアニメ、もっと言えば映画における劇伴の重要性を引き上げることに一定の貢献を果たしたことは間違いない。80歳となる2021年現在も様々な形態で精力的に『ルパン』の音楽を聴き手に届ける活動を続けている大野雄二だが、このあたりで久々に『ルパン』以外の映画音楽も聴いてみたいところだ。(文:伊藤隆剛/音楽&映画ライター)
PICKUP
MOVIE
INTERVIEW
PRESENT
-
安田淳一監督のサイン入りチェキを1名様にプレゼント!/『侍タイムスリッパー』
応募締め切り: 2025.01.10 -
ダイアン・キートン主演『アーサーズ・ウイスキー』一般試写会に10組20名様をご招待!
応募締め切り: 2025.01.04