父が安否不明に。母と子どもたちも連行される冒頭シーンを公開
北朝鮮強制収容所の過酷な環境で生きていく家族とその仲間たちの姿を描いた3Dアニメーション『トゥルーノース』が6月4日に公開される。このたび、本編シーンが公開され、著名人からの推薦コメントも寄せられた。
・北朝鮮収容所の10年描く、極限下で人間はどう振る舞うのか?
本編シーンでは、1950年代から84年の“在日朝鮮人の帰還事業”で北朝鮮に渡った主人公ヨハン一家の父が失踪し、母が電話で安否確認をするところからスタート。
不安を抱きながらも気丈に振る舞う母と、最初は無邪気な子どもたち。そして夜間に突然、乗り込んできた男たち。「貴方の夫は国家と党に対して深刻な罪を犯しました」と告げられた母子は不安な表情を浮かべ、着の身着のままトラックの荷台に乗せられる……。
母の戸惑いの言葉、そしてヨハンとミヒ幼い子どもたちの表情から、彼らの不安が一気に観客にも伝わる緊迫のシーンとなっている。
北朝鮮強制収容所の真実と監督の覚悟に心打たれる
本作品については、各界著名人からのコメントも到着している。
俳優の滝藤賢一は、「ずば抜けた映画だ。この理不尽極まりない地獄から人間がいかに神秘的な生物か浮き彫りにしてくる。人間は素晴らしいよ!」とコメント。
映画監督の武正晴(『アンダードッグ』『百円の恋』)は、「誤った国家による被害者が加害者となっていく描写に身震いした。少年少女たちの収容所での成長譚に救われた。映画とは人を救うために創られることを再認識した。清水ハン栄治監督の偉業は余りにも尊い。どうかお子さんを連れて劇場で家族と見て頂きたい」と家族で見るべき映画であることを示唆した。
映画監督の熊切和嘉も、「苛烈の隙間に見えた満天の星空と、壁に貼られた花びらの鮮やかさ。自分がいかに大切なことから目を逸らして生きているかを思い知らされた」と映画、とくにアニメーションならではの表現力を実感させた。
映画監督・演出家の深作健太は、「アウシュヴィッツへ行った。カンボジアのトゥールスレンでも同じ光景を見た。“国家”という言葉の愛おしさと恐ろしさを、僕たちは考え続けなくてはならない」と実体験を踏まえたコメントを寄せた。
映画監督の豊島圭介は清水ハン栄治監督が10年を掛けて取材を重ね完成させた意気込みに触れ、「監督は、北朝鮮の強制収容所にいる12万人を本気で救おうとしている。真実を伝え、人々を動かそうとしている。そのために彼が選んだのは『超一流のエンターテイメントを作る』という方法だった。心を揺さぶられまくりました」と感嘆した。
アニメ評論家の藤津亮太もその取材力について触れ、「取材を踏まえた“重さ”と物語の“力強さ”がしっかりと組み合わさって、現実の冷酷さとその先の光を描き出した一作だ」とアニメを超えた魅力の背景について分析してみせた。
映画ジャーナリストの中山治美は、『愛の不時着』にハマった人ほど必見と言い、「あの世界をより深く理解するためにも、知らねばならない真実がここにある」とコメントした。
突如強制収容所に送られた一家の人間物語
本作品は、60年代の帰還事業で日本から北朝鮮に移民したパク一家の物語。
一家は平壌で幸せに暮らしていたが、突然父が政治犯の疑いで逮捕。家族全員が政治犯強制収容所に送還されてしまう。過酷な生存競争の中、主人公のヨハンは次第に純粋で優しい心を失って他人を欺く一方、母と妹は人間性を失わずに生きようとする。そんなある日、愛する家族を失うことをきっかけに、ヨハンは絶望の淵で「生きる」意味を考え始める。やがてヨハンの戦いは他の者を巻き込み、収容所内で小さな革命の狼煙が上がる。
『トゥルーノース』は6月4日に公開される。
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