「ビッグコミックスピリッツ」誌に連載され、熱狂的人気を博した花沢健吾のマンガを映画化した『ボーイズ・オン・ザ・ラン』の特別披露試写会が12月14日にヒューマントラストシネマ渋谷で行われ、スタッフ・キャストが舞台挨拶を行った。
この日は冒頭からマイクの調子が悪く、あいにくのスタートとなったものの、個性的な面々のユニークなコメントに、客席には笑い声が絶えなかった。
29歳・童貞のイケてない主人公を演じたのは、銀杏BOYZでボーカルを務める峯田和伸。原作の大ファンだったそうで、映画化してほしくないと思っていたと告白。「でも、三浦大輔さんが監督だと聞いて、ケンカだな!」と思い、出演を決めたと明かした。とはいえ、人一倍人見知りが激しいという峯田。実は三浦監督も人見知りだそうで、監督は、「最初はまったく会話ができず、お見合いみたいだった」と苦笑いしていた。
一方、主人公が恋するヒロインを演じた黒川芽以は、「人見知りをいじるのが好きなので、いろいろと話しかけたりしていました」とニッコリ。峯田は、「(撮影中)寝てなかったり辛いときなどは、黒川さんに元気をもらいました」と、消え入りそうな声で話してくれた。
主人公をコケにするエリート営業マン・青山という一種の悪役を演じたのは松田龍平。峯田とケンカするシーンでは、松田の蹴りが見事に峯田のみぞおちに入ってしまったこともあったそうで、「痛かったです」と峯田。思わず涙が出てしまったとも話していた。また、松田は自らの役の性格について「あまり好きじゃない」と本音を打ち明けるも、「嫌な役を徹底的に演じました」と、淡々と語っていた。
そんな松田について語ったのは、主人公の酔いどれ上司を演じた小林薫。「お父さん(松田優作)と仕事をしたことがあり、小さい頃の龍平君を知っていて、(成長ぶりを目の当たりにして)感慨深いものがあった」としみじみとした口調で語っていた。
エロビデオ三昧の主人公が、命がけの恋に突っ走る無様な青春を描いた本作。主人公が勤める弱小玩具メーカーの社長を演じたリリー・フランキーは、「どんよりした人間の弱さがたくさん出ている映画で、そこが愛おしい」と映画の魅力をアピール。さらに、「オレが(主人公と同じ)29歳のころは、童貞に毛が生えているようなもんでした」と自らの若き日に思いを馳せる場面もあったが、司会者に「ありがとうございます」とあっさり打ち切られ、それ以上、会話は膨らまなかった。
この日は原作者の花沢健吾も登壇。なんと、本作に俳優としても出演しているそうで、「俳優を目指して頑張ろうと思っていた」と語るも、スクリーンに映る自分を見て「どう考えても、おかしな人が1人いた」と感じたと、寂しそうな笑みを浮かべていた。
監督は、演劇界の芥川賞とも言われる岸田國士戯曲賞を受賞したこともある逸材だが、映画監督を務めるのはこれが初めて。「非力なボクが本当に必死で撮りました。死にものぐるいで撮ったので、マンガと同じ精神だと思います。夢や希望だけの映画ではないのですが、2時間飽きないエンターテインメントを作ったつもりです」と、初監督作への思いを語っていた。
『ボーイズ・オン・ザ・ラン』は2010年1月30日よりテアトル新宿ほかにて全国公開される。
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