“平凡なモブ”が運命の女性の登場でキャラ変!? ライアン・レイノルズが演じる21世紀のヒーロー像
#ジョー・キーリー#ショーン・レヴィ#ジョディ・カマー#タイカ・ワイティティ#フリー・ガイ#モブ#ライアン・レイノルズ#レビュー#週末シネマ
『デッドプール』のライアン・レイノルズが平凡すぎるモブに
【週末シネマ】『デッドプール』シリーズの無責任ヒーロー役として、SNSのユーモラスな投稿でも人気を誇るライアン・レイノルズ。最新主演作『フリー・ガイ』では、Netflixのドラマ『ストレンジャー・シングス 未知の世界』のショーン・レヴィ監督と組み、ごく平凡な男性から、いい人すぎるヒーローへと進化する主人公を演じている。
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主人公のガイは目立った特徴のない人物。毎朝起きると水槽の金魚に挨拶し、毎日同じデザインの青いシャツを着て銀行に出勤し、途中で落ち合う警備員の親友との会話も、立ち寄るカフェでオーダーするコーヒーも判で押したように寸分違わない。のどかな日常だが、彼が暮らす街は、実は暴力と犯罪だらけで、ガイが窓口に立つ銀行には毎日強盗が押し入ってくる。それすらも平然と受け流しているのは、彼が過激なオンライン・ゲーム「フリー・シティ」のモブキャラ(背景キャラ)の1人だからだ。
映画やドラマで言えばエキストラに当たる存在で、ゲームに参加するプレイヤーが操作するのではないモブキャラであるガイは、ある日、運命の女性と出会い、自分が置かれた立場とその役目を知る。
名作のいいとこ取りを超えてオリジナルエンターテインメントへと昇華
自分が暮らす世界が仮想現実だと気づくのは『マトリックス』、アバターとしてゲームの世界にやって来るキャラクターも活躍するのは『レディ・プレイヤー・ワン』、自身の一挙一動が注目されるのは『トゥルーマン・ショー』のようでもあり、同じ日を何度も繰り返すのは『グラウンド・ホグ・デイ』風味。過去の名作の美味しいところの寄せ集めなのか? と思いきや、そこはしっかりと楽しませるオリジナルなエンターテインメント作品だ。
フリー・シティの様相はあくまで実写ベースで、現実世界の描写との違和感は映像としてはほとんどない。2つの世界が渾然一体となった臨場感がある。
ガイが出会う、モロトフ・ガールと名乗る女性は、現実世界ではミリーという女性ゲーマーが操作している。彼女の登場によって、ガイは意思や主体性を持つようになり、ゲームのプレイヤーたちとは無関係にヒーローとして存在感を増していく。ゲーム開発会社のワンマン社長・アントワンは部下のプログラマーでミリーの友人でもあるキーズにガイの暴走を抑えるように命じる。ミリーを演じるのはTVシリーズ『キリング・イヴ/Killing Eve』でエミー賞主演女優賞を受賞したジョディ・カマー、アントワンは監督・出演作『ジョジョ・ラビット』でアカデミー賞脚色賞を受賞したタイカ・ワイティティ、キーズは『ストレンジャー・シングス 未知の世界』のジョー・キーリーが演じ、ほかにリル・レル・ハウリー(『トムとジェリー』『ユダ&ブラック・メシア』)、ウトカルシュ・アンブドゥカル(『トムとジェリー』)が出演する。
ポップな笑いに深遠なテーマを包み込んだエンタメ作品
レイノルズが醸し出す、事なかれ主義の小市民らしさは共感を誘う。普通の男がヒーローに、と言っても『ダイ・ハード』のような孤軍奮闘ではないところも、21世紀の今の空気をしっかりと取り込んでいる。映像的には20世紀スタジオとMCU(マーベル・シネマティック・ユニバース)への目配せもありという大サービスだ。
本作はパンデミックの影響で公開が1年以上延びた。多くの人が自分の生活や大切なものを見つめ直す時間を経た今こそ、作品を味わうにはタイムリーに思える。ポップな笑いに包まれた全編から、深遠なテーマがしっかりと伝わってきた。(文:冨永由紀/映画ライター)
『フリー・ガイ』は2021年8月13日より公開
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